それは明らかに、ある「海賊版アプリ」を狙い撃ちしたものだった。1月20日、LINEは音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC(ライン ミュージック)」のリニューアルを発表した。LINE MUSICは、月額960円で5900万曲が聴き放題のサブスクリプションサービスだ。しかし、今回のリニューアルで、すべての楽曲をそれぞれ毎月1回、広告なしでフル再生できるように変更した。これまで、同サービスの無料会員は最大30秒尺しか試聴できなかったことを考えると、思い切った変更だ。なぜLINEは、大胆なリニューアルに踏み切ったのか。実はその裏側には、10代の間で盛んに使われる「Music FM」という無許諾音楽アプリの存在がある。今のLINE MUSICにとって、最大のライバルはSpotifyでもApple Musicでもない。「Music FM」とはいったい何者か。要点を解説する。若者に大人気の「違法アプリ」「Music FM」は、2012年から提供が開始された中国発の音楽配信アプリだ。ストリーミングの他、楽曲をダウンロードし、オフライン再生もできる。
それだけを聞けば、SpotifyやApple Music、LINE MUSICなどのサブスクリプションサービスと同じ設計に思えるかもしれない。しかし、Music FMは著作者に無許諾で楽曲を配信する違法アプリだ。最新のヒットナンバーも懐メロも無料で使用し、中にはジャニーズなど、サブスクリプションサービスでは未配信の楽曲もストックされている。広告モデルのビジネスで、中国のアプリ開発者が所有するサーバーから音楽を配信し、ユーザーの画面に表示をすることで収益化している。昨年日本では、マンガの海賊版アプリ「漫画村」の運営者が逮捕されて話題になったが、音楽でも同じ問題が起きているのだ。Music FMが日本で普及し始めたのは、2016年頃から。中高生を中心に火がついた。LINE MUSICが行なった2018年10月の調査では、「スマホで音楽を聴く際、最も使っているサービス」として、全世代の11%、10代では実に31%がMusic FMのような無許諾アプリを使用していることが判明した。